下水道地震対策プロジェクト
工事のbefore/afterに注目してプロジェクトを紹介します
プロジェクト概要
本工事は、災害時にも機能を維持できる下水道施設の強靭化を目的として実施しました。
対象区域では老朽化が進んだ管路やマンホールの耐震補強を行い、液状化対策、耐震継手の導入、補強工法による機能向上を図りました。
施工にあたっては、都市部の限られた作業スペースと交通への影響を最小限に抑えるため、夜間作業や段階的な施工計画を徹底しました。また、既存管の使用状況を精密に調査し、工法選定を柔軟に見直すなど、現場対応力も求められる工事でした。
厳しい条件下ではありましたが、当社の高い技術力と現場力を結集し、無事故・無災害で工事を完了。将来的な災害リスクの低減に貢献し、地域の安全・安心を支える社会インフラの信頼性向上に寄与する成果を上げることができました。

管渠更生工法(SPR工法)で の耐震工事
耐震工事前の下水管

耐震工事後の下水管

SPR工法(スパイラルパイプリニューアル工法)は、既設の下水道管などを掘り返すことなく、管内に新たな管を構築する「非開削」の管更生工法です。専用の施工機械を使用し、塩化ビニル製の帯板(ライナー)を螺旋状に巻き上げながら既設管の内側に新管を形成します。巻き上げた後はグラウト材で空隙を充填し、既設管と更生管を一体化。構造的な強度と耐久性を確保します。
この工法の最大の特徴は、既設管の形状や断面変化に柔軟に対応できる点です。円形管はもちろん、卵形管や馬蹄形、大口径の特殊な断面の管渠でも施工可能です。また、マンホールから機械を挿入して作業できるため、道路や地表面を掘削する必要がなく、交通や生活への影響を最小限に抑えることができます。
施工は、マンホール間に機械を設置し、連続的に帯板を送り込んで巻き上げていくため、長距離施工にも適しています。また、使用する帯板は工場で成形された高品質な素材であり、耐薬品性・耐摩耗性に優れています。
SPR工法は、老朽化が進んだインフラの延命に大きく貢献する工法として、全国各地の自治体で採用が進んでいます。
工事の様子(地上)

SPR工法による下水道工事が地中で進められている間、地上では多くの作業と管理が同時に行われています。まず、施工場所には作業ヤードが設置され、資材や機材の搬入出が日々行われます。地上に開けられた既設マンホールから機械や作業員が出入りするため、安全柵や仮囲いを設置し、第三者への影響を最小限に抑える工夫がされています。また、道路の一部を使用する場合は交通規制が必要となり、誘導員を配置して車両や歩行者の安全確保に努めます。
さらに、騒音や振動への配慮も重要なポイントです。近隣住民に対しては、事前の周知や工事中の進捗報告など、丁寧な情報発信を行い、理解と協力を得られるよう努めています。一見静かに見える現場でも、見えないところで多くの人が連携しながら工事を支えているのです。SPR工法の特性を活かしつつ、地上での影響を最小限にする努力が日々続けられています。
工事の様子

SPR工法による下水道工事の地中作業は、限られた空間と厳しい環境の中で行われるため、高度な技術と慎重な対応が求められます。既設管の内部に入り、新たな更生管をスパイラル状に形成していく作業は、わずかなズレや変形が後の排水性能に大きな影響を与えるため、常に高い精度が求められます。また、地下は暗く湿度も高いため、視界や足場が不安定で作業環境としては過酷です。換気や照明の確保、安全装備の着用はもちろん、作業員同士の連携と声かけも欠かせません。ガスや酸欠の危険があるため、事前の空気測定や排気設備の整備など、万全の対策が必要です。さらに、地表からの確認が難しいため、記録用カメラや計測機器によるデータ管理も重要となります。小さなミスが大きな手戻りにつながるため、一つひとつの作業に細心の注意を払いながら進めています。地中での作業は目に見えませんが、見えないからこそ厳密な施工と安全管理が求められる現場です。
